「未来創造塾に私はこう参加する」

去る11月22日(金)、23日(土)に開催されたORF2013において、「未来創造塾に私はこう参加する」と題したセッションを行いました。

セッションでは、SFCが創設以来かかげている

  1. 学生と教員が寝食と共にしながら、半学半教を行う24時間キャンパス
  2. 地域とともに発展するキャンパスタウン
  3. 世界の知が結集するグローバルキャンパス

の実現に向け、2015年秋開設予定の未来創造塾に対し、16名の教員が「私はこう参加する」というメッセージを発表しました。

以下、各教員のメッセージ要旨を紹介します。

新しいICT技術を使った研究環境を築き、提案する
植原 啓介 環境情報学部 准教授

ICT系の教員としては、設立当初からICTで学びを変えていくことを提案してきたキャンパスであると自負しています。今回新たに研究施設を作るにあたり、新しい時代のネットワーク、新しい時代の研究を支援するためのICT環境を作っていきたいと考えています。今の時代はデータに基づいてアクションを起こすビッグデータという動きもありますし、データという意味ではMOOCsといったものも入ってきて大学の教育も変わっていきます。キャンパス内、国内にとどまらず、世界と繋がれる、世界とコラボレーションできるようなネットワーク環境、コンピュータ環境を、SFCで活動している先生方と一緒に築き、新しいICTを使った研究環境はこういうものだということを提案していきたいと思っています。


産業界、SFCのITをはじめとする各研究会と連携を図り、予防医療に取り組む
渡辺光博 政策・メディア研究科 教授

私は未来創造塾で、科学、サイエンスから世界へエビデンスのある情報を発信し、政策を提言していきたいと思っています。慶應SFCにおけるヘルスサイエンスを、今、軸の一つとして立ち上げようとしています。

心、運動、食3つの観点から健康長寿を目指し、世界に通用する人材の育成、最新ヘルスサイエンスの研究の世界への提言、そして生涯現役で健康長寿社会をの実現するため、国政への提言も行っていきます。最終的には120歳まで健康で生きられる社会を目指したいと考えています。

日本は超高齢化社会になり、この難局をどのように対処していくかに世界中が注目しています。この状況は逆にチャンスであり、これを乗り越えればそのノウハウを世界に情報発信していけます。そのための研究を食、運動、心など様々な観点からアプローチしていきます。例えば、アンチエイジング研究や体内リズムと健康、腸内細菌についての研究を産業界やSFCのITをはじめとする他研究会とも連携を図り、予防医療に取り組んでいきます。これらの成果は、新聞報道、テレビなど各報道機関を通じ国民に還元していきたいと考えています。


医療・スポーツの世界におけるセンシング技術の研究教育
仰木 裕嗣 政策・メディア研究科 准教授

これまで専門のスポーツ科学において、人間のセンシングによってアスリートの技能を技術化すること。コーチ・指導者が経験によって教えてきたことを客観的、且つ科学的なデータに基づいて指導するためのセンシングを突き詰めて、超小型デバイスなどを開発してきました。

以前から義足の研究を続けていますが、センシングと、そこから得られる知識、センシングした情報と今までの知見を活かして、誰でも簡単に歩行の練習が出来る、適切な歩行をするための義足を選択できるといったことを目指しています。今年4月に立ち上げたスポーツダイナミクスインフォマティクスラボを、他の先生方と学祭的にやっていきたいと考えております。

未来創造塾の中で学生が国内のトップを目指すのではなく、国際的に活躍するアスリートの養成にも貢献できればと考えています。また、リハビリテーション分野でもリーダーシップがとれるような、研究教育ができればと考えています。


デジタルモノづくりファクトリーの実現
松川 昌平 環境情報学部 専任講師

私は未来創造塾で、デジタルモノづくり工場─未来創造ファクトリー─を作りたいと考えています。
昨今、3Dプリンターのようなデジタルパブリケーション機器によって、実空間にモノとしてプリントアウト出来るようになってきました。デジタル技術がモノそのものにまで拡張してきている中で、こうしたものを学生と一緒に長い時間をかけ、学校に泊まりながら実習できる施設が実現できないかと考えています。我々のイメージに近い実例は海外にいくつかあります。例えば、チューリッヒ工科大学の工場イン工場のような場所。全体を見渡せるようなロフト空間がある、二層吹き抜けの広いスペースで、モノづくりの場所と研修する学習施設が一体となったファクトリーを実現したいです。

それは、学生と我々だけでなく、デジタルなモノづくりをキーにした、地域の方や企業の方とも連携を図れるデジタルモノづくりコンソーシアム。そういう拠点にしてもらいたいと思います。


未来創造塾を国際交流の場に
藁谷郁美 総合政策学部 教授教授

私はドイツ語教育に特化して言語教育を研究しています。SFCでは英語を含めて11の言語が学習言語として実践的に教えられていますが、未来創造塾では、様々な言語、文化、そして国が交流する。その実現の場にしたいと考えています。

我々の言語教育は、言語を受動的に学ぶ、あるいは考えるというものではなく、学生が自分のこと、自分の学習について、自分の考えについて、日本語で発信するのと同じように外国語で発信することができる。その運用能力を培うのがSFCの言語教育の理念です。その実現に必要である実践の場が、教室の内だけでなく、教室の外においても現実と連動してひろがることを理想としています。そのために、学問分野の領域だけではなく、企業、海外との大学とのコラボレーションを可能とする場の構築をも、この未来創造塾で培うことができるのではないかと思っています。

来年度からは特に学習言語としての日本語も含め、多言語によるコミュニティー形成が留学生とSFCの学生の「協働学習の場」として機能することを期待します。


従来のキャンパスと一体的に進めていく
巌 網林 環境情報学部 教授

ORFイベント活動の内容や、その他のイベント、研究、アイデアをどんどん出していくことが、国際観点から見た未来創造塾の姿ではないかと思います。

短期で受け入れた留学生を日本人学生と分けることなく一体的に進めていく仕組みや、修士課程、ドクター過程、交流所に受け入れるための設備として、未来創造塾にかける期待は非常に大きいです。教員みなさんの活動を積極的に発信していく仕組みを開発し、国際的な仕組みまで作っていきたいというのが目標です。そこでは、いかに自由な教育を変えて、オンラインとフェイスのハイブリッドの仕組みを国際的な中で考えていくのが大きなポイントになると思います。

すでに今、提携大学などとグローバルクラスルームというような形の仕組みをいかに作っていくかを検討しています。未来創造塾はそのための重要な拠点になります。従来のキャンパスと未来創造塾と分けて考えるのではなく、一体的にやっていくことが魅力です。


心に深く関わるグループ活動を滞在型で実施
森 さち子 総合政策学部 准教授

7、8人ほど、全く知らない人が、言葉を一切使わず、白い大きな紙に泥絵具を使って指で自由に絵を描く、フィンガーペインティングというグループ活動があります。大抵みんな隅から始めます。描いているうちにだんだん広がり、他の人の領域に入ろうか、入るのをよそうかと迷います。積極的にかかわりながら調和を求める人、ずっとひきこもって自分の絵だけに没頭する人など様々です。絵が出来上がったところで、その体験のプロセスを初めて言葉を用いて話し合います。指で描いている時には、言葉によるごまかしや表層的な関わりができないので、その人自身のプリミティブな心が動き出します。

今まで対人関係が得意だと思っていた人が、どんな風に人と関わったらいいか戸惑ってしまい、ほんとうは不器用だったと気づいたりします。このような、心に関わる相互作用が“滞在型”で行われれば、非常に濃厚なグループ体験が生まれ、その中で子ども心が賦活され“自分”に気づくきっかけが得られるでしょう。


キャンパスを利用する人たちが発する情報を循環させる建物に
中澤 仁 環境情報学部 准教授

現在、民間企業と協力してプログラミングの講座を開設しており、年間で約400人の子どもたちが参加しています。スマートフォンには、いろいろな情報やツールがあり、画面を触るだけでたくさんのものが落ちてくる。よって子どもたちに自分で作る、自分で探すといった機会が減っているような気がします。しかし、情報技術の分野における人材にはそうしたことは重要であり、自分で作る機会を若いうちから与えなくてはと思います。

新しく作る建物は、単純に空間や機能を提供するだけでなく、建物を運営する人たち、利用する人たちが発する情報を循環させることがとても重要です。そのための仕組みの一つは無線LAN端末の位置情報を使う技術。もう一つは、壁や天井にセンサーを埋め込む技術。それにより、どこで誰が何に困っているのか、どこで誰が何を楽しんでいるか、ということがわかるようになります。そうした技術を建物の中に埋め込めたらと考えています。


これまでにない生命体を創造する研究を行う
黒田 裕樹 環境情報学部 准教授

未来創造塾ができると、その中にヘルスサイエンス研究センターにあたるようなものが作られると思います。そこで私は、生命を実験的に扱っていくという立場になります。SFCにはモノづくりのスペシャリストが大勢いますが、私は発生生物学という、命の形作りのスペシャリストです。球体の卵が、どんどん形を変えていく、そのメカニズムを解き明かすことに携わっています。皮膚の細胞から、オタマジャクシのような生命体が作れるようになってきています。未来創造塾という大規模な形になったら、より素晴らしいものが出来ると確信しています。

モノづくりと形作りは似た面があります。形作りを勉強していくと、究極のところ、物理的には同じメカニズムが用いられています。ですから、未来創造塾の中では形づくりの先生方と共同研究を行い、これまでにない新しい生命体。もしくは、自分たちの欲しい生命体。そういったものを創造する研究をしていきたいと思っています。


未来創造塾はライフスキルを獲得する場所
東海林 祐子 専任講師

ライフスキルは、人生で生じる様々な困難などを、建設的かつ効果的に解決していく能力のことで、コミュニケーションや礼儀マナー、ストレスマネージメントなどのスキルによって構成される概念です。入学段階で行うアンケートの結果、5年前10%強だったライフスキル高群の人たちの割合が徐々に増え、今(*1)は20%(*1)を越えています。主体的に生きるスキルを持った学生がたくさん入学してきているのでしょう。滞在型によって、スキルの成長曲線の上昇は期待できます。学生の実態を把握し、元々高いスキルを持った人たちには、どのようなプログラムを作っていけば伸びていくのか。スキルの低い人たちには、前段階のステップを提供しながら、次のスキルの獲得を考えていくといったことも必要だと思います。未来創造塾は、集団の中で、お互いが関わり合いながらライフスキルを獲得していく場所。このような理念のもとで学生と接し、自分自身も成長していきたいと考えています。
(*1)2013年度の調査では30%を超えました。


コトづくりを輸出できる人材の育成
SFC研究所 所長 小川克彦教授

坂本龍馬は欧米のいろいろ知恵をもとに、明治維新を打ち立てるという大きな偉業をなしとげました。そして現代、押井守は「攻殻機動隊」というアニメ映画を制作してハリウッドに進出しています。クールジャパンと呼ばれるコンテンツの輸出です。龍馬の時代から、多くのコンテンツが諸外国から輸入されていますが、最近では「攻殻機動隊」をはじめとして、いろいろなアニメや漫画が海外に出て行っています。 

日本は社会問題の先進国です。ORFの多くの展示で気がつくのは、この社会問題の解決策について、SFCがいろいろな知恵を出し合っていることです。これまでの日本はモノづくりを旗頭に輸出してきたのですが、クールジャパンとともに、これからは社会問題の解決策というコトづくりが世界中から求められてくると思います。
おもてなしという言葉が流行語になりましたが、日本らしい視点でコトづくりを海外に出せる人材を、未来創造塾で育てたいと思います。


卒業生・学生たちと共に、究極の滞在型教育を創り出す
環境情報学部 南 政樹 講師(非常勤)

未来創造塾は、滞在を軸にした教育・研究の新たな取り組みです。これはSFCのコンセプトに元々あった「キャンパスヴィレッジ」の具体化ですが、加藤寛先生の「ミネルバの森」に象徴される卒業生を包含する学び場でもあると思います。私はここで、卒業生、学生たちと共に究極の滞在型教育を創り出したいと思っています。

準備として、滞在を前提にした学びの場作りをテーマにした講義「未来創造塾入門」を開講しています。その中では、建設予定地にテントを張りその中でグループワークを行ったり、実際の滞在で必要となる秩序作りを題材として陸上自衛隊の高等工科学校を体験見学したりしました。自分たちの知らない世界を知ることで、想像を膨らませています。今後は卒業生と一緒に滞在して、互いのアンテナを刺激し合うような場作りをおこなっていきます。

残念ながら、SFCの卒業生ネットワークはまとまっているとは言えません。これがSFCの最大の弱点です。個別に声がけすると、SFCのためならと、喜んで引き受けてくれるのに、その繋がりさえ存在していません。その弱点を克服するために未来創造塾を活用し、たくさんの卒業生が戻ってきたくなる仕掛けを用意したいと考えています。


本当の人間交際、学術的な融合ができる場に
慶應義塾大学環境情報学部/大学院政策・メディア研究科委員長
 徳田 英幸教授

以前、阿川先生と未来創造塾に関して話したとき、ハーバードやスタンフォード、オックスフォードやケンブリッジにあって、慶應義塾にないものは何か。それは、共に住み共に学び、本当の人間交際をする場が足りないのではないかという話になりました。大正時代は天現寺に寮があったそうですが、未来のSFCを引っ張っていく、未来の社会を引っ張っていくためには、やはりそうした場が必要でしょう。

アメリカには、レジデンシャルエデュケーションという言葉があります。レジデンシャルエデュケーションの場と新しい学術的な融合。私が最も興味があるのは、共に生活をする場ができると、新しいケミストリーができるということです。SFCの中には、医工連携、文理融合といった言葉が出てきていますが、本当の意味で、新しいSFCを中心にしたヘルスサイエンスや、新しい建築のエクササイズ、情報と建築の融合、新しい実験などが未来創造塾でできるといいなと考えております。


「未来創造塾」が出来上がるまでの期間について
環境情報学部 加藤 文俊教授

3年前から、高校生と一緒に、半日かけてワークショップをおこなう「未来構想キャンプ」を実践してきました。その活動と、これから生まれてくる「未来創造塾」が物理的に出来上がるまでの期間をどのように過ごすかということに関心を持っています。

暮らしながら勉強するというのはどういうことなのか、勉強しながら暮らすというのはどういうことなのか、私たちも体験的に学ぶことがたくさんあるでしょう。ここ数年、SFCで学びたいという高校生が増えています。ですから、ユニークな学び方、教え方について「未来創造塾」の完成を想い浮かべながら考えていきたいと思います。

ある日突然、カリキュラムや時間と場所の使い方が変わるわけではないので、段階的に、少しずつ変化に適応していくための工夫について、もっぱらプログラムのデザインという形で関わりたいと思っています。正規の授業ではなくても、教員が学生たちと寝食をともにするという体験から学ぶことは、たくさんあるはずです。


分野横断的な研究を生かしたプロジェクトで世界に貢献していく
環境情報学部 秋山 美紀准教授

未来創造塾における研究の大きな柱は、健康、モノづくり、情報技術で、これら3つの柱をつなぐキーワードがデザインだと思います。健康とモノづくりをつなぐ研究として、たとえば、心と健康、ストレス・疲労の科学、高齢者や障害者を支える技術、運動機能とバイオメカニクス、ロボット研究があります。健康と情報技術をつなぐ研究は、先端生命科学研究所の得意分野でもあり、食と健康、腸内細菌。光と健康、農業など様々な分野が考えられます。

モノづくり情報技術の分野は、SFCが本来得意としてきた分野です。こうした分野横断的な研究がSFCの強みであり、これらをどう創発していくかという点が、この未来創造塾に一番求められていることではないでしょうか。未開発の分野を、世界最先端技術を駆使して科学的に解明するといった研究を進めていく。そして、分野横断型の社会応用プロジェクトで世界に貢献していく。そのような未来創造塾になると良いと思っています。


未来創造塾は、新しい未来の創造を志す、世界中の高校生が集まれる場所
環境情報学部長  村井 純

23年前、新しい社会、新しい世界を創造する人材が生まれるキャンパスを作りたいということでSFCが生まれました。これまでの大学や教育にとらわれず、勇気を持って未来を創造する使命はキャンパス自体にもあるわけです。世界中が一つの空間になること、人間個人の役割を果たしその活躍ができる社会を創造すること、SFCこれらの使命を一歩一歩、先導者として実現してきました。これから先も、やはり今までにとらわれず、それぞれの分野の力を合わせ新しい世界を創っていくのは、SFCの使命であり続けます。今の学生たち、またみなさんのような未来の学生たちによって実現するのです。次の未来を創るために、今までのことを理解することは大切ですが、決して今までのことにしがみついていてはできません。全く新しい方向で未来を創ることを高い知性と勇気をもって志す、世界中の高校生が集まれるようにしよう、それが未来創造塾です。未来創造塾は文字通り、未来を創造する場所であるということをみなさんにご理解いただき、一緒にこのプロセスを進めていきたいと思います。


未来創造塾からコンセプショナルでスピリチュアルなカルチャーが生まれてほしい
総合政策学部長 河添 健

私の専門はフーリエ解析なのですが、なかなか学生がついて来られない。そこで画像処理をやめて画像-絵画-を直接に扱うようになりました。研究会では絵画論を取り入れています。芸術の世界は意外と数学とは無縁ではありません。四次元を芸術にしようとした芸術運動-ロシアンアヴァンギャルド-において活躍したカンディンスキーやエル・リシツキーは当時の最先端の数学を勉強しています。当時の芸術運動はとてもコンセプショナルでスピリチュアルなのです。

SFCは20年前にネット社会を始めました。20年が経ってネット社会が世間に浸透しても、このキャンパスは今でも最先端です。学生の生活もネット社会にどっぷりと漬かっています。しかし、ネット社会を浅いレイヤーで捕えているのではないでしょうか。未来創造塾を立ち上げるからには、もう少しコンセプショナルなところに踏み込んでほしいと思います。50年後、100年後に未来創造塾が、SFCアヴァンギャルドの発祥の地と言われるようなカルチャーが生まれることを期待しています。